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「やさしい日本語」翻訳訓練
~短時間で情報を翻訳するには~





○はじめに
 2016年9月28日、北海道と東北6県の国際交流協会はシミュレーション訓練を行いました。この訓練では災害時に外国人住民へ情報を伝える場面を想定しています。
 訓練では伝えたい情報を翻訳する言語として、英語・中国語・韓国語・スペイン語・「やさしい日本語」が選ばれ、私たちは「やさしい日本語」への翻訳を担当しました。
 なお、「やさしい日本語」とは、災害発生後約72時間以内に、命を守るための最低限の情報を外国人へ伝えるために考え出された、外国人にもわかりやすい日本語のことです。
 「やさしい日本語」について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

 このページでは、そのときの訓練内容や「やさしい日本語」へ情報を翻訳している作業中の様子を紹介します。あくまでも訓練時の結果ですが、翻訳に掛かる時間や、翻訳作業で気を付ける点などを記しました。皆さんが「やさしい日本語」に翻訳するときの参考にしていただけたら幸いです。






            
目次
   ①訓練の概要
   ②訓練で用いた文章
   ③訓練の翻訳作業内容
   ④訓練で作成した「やさしい日本語」の文章
   ⑤訓練で参考にしたもの
   ⑥おわりに





①訓練の概要
(1)訓練の内容
 北海道・東北6県の国際交流協会は、2016年9月28日午前10時に宮城県内を震源とする地震が発生したと想定し、外国人住民へ情報を多言語に翻訳して知らせる訓練を行いました。
 私たちは30分以内で「やさしい日本語」に情報を翻訳し、国際交流協会へ戻すことを目標にしました。



(2)作業に掛かった時間
 午前11時38分に翻訳依頼と普通の日本語で書かれた翻訳原稿のメールを受信し、午後12時7分に翻訳回答メールを返信しました。作業に掛かった時間の内訳については、図1の通りです。図中の文字が緑色の箇所は、実際に翻訳作業をしていた26分間を表しています。

図1 作業時間

 上記の「放送用案文」とは、災害時に外国人へ放送で情報を伝える「やさしい日本語」案文のことです。今回は原文を「やさしい日本語」に翻訳することが目的でしたので、放送用案文の形で作成しました。



(3)参加人数・作業分担
 今回訓練に参加したのはゼミ生10名、教授1名の計11名で、ゼミ生内で表1のように係を分担しました。

表1 係の概要
係の名前 仕事の内容  人数 
メール係 メール受信と転送
作成した「やさしい日本語」への翻訳表現の返信
 1名
タイムキーパー係 翻訳作業開始から経過した時間の通知  1名
記録係 翻訳作業開始からメール返信までにかかった時間の記録
案文検索・確認係 研究室が過去に作成した「やさしい日本語」の文章から参考になる表現の検索  2名
「やさしい日本語」文作成係 案文検索・確認係が選出した情報を基に「やさしい日本語」への翻訳作業  4名
やんしす・チュウ太操作係 翻訳した文が「やさしい日本語」のルールに沿っているかをやんしす・リーディングチュウ太で確認  2名

 表内にある「やんしす」と「リーディングチュウ太」について説明します。「やんしす」は作成した「やさしい日本語」文の長さを判定してくれるパソコンやスマホで使うツールです。「やさしい日本語」では1文の長さの上限を30拍に定めており、この拍数も確認できます。
 「リーディングチュウ太」は作成した「やさしい日本語」文の中に難しい語彙がないか判定してくれるホームページです。難しい語彙とは旧日本語能力検定試験2級以上、新日本語能力試験のN3以上の語彙を指します。詳細は「⑤訓練で参考にしたもの」にリンクを貼ってありますので、そちらをご覧ください。





②訓練で用いた文章
 次の文章は、訓練で実際に用いられた原文です。

東北新幹線、宮城県内の在来線はすべて運行を見合わせています。
また、地震の影響で仙台空港を発着する便は全て欠航します。
旅行者など家に帰れない人のために、一時避難場所があります。
誘導員の指示にしたがって落ち着いて行動してください。




③訓練の翻訳作業内容
 ここではところどころ訓練中の写真を用いながら、具体的な作業内容を紹介します。



(1)訓練前
  訓練前に一度リハーサルを行いました。このリハーサルでは各自が担当する作業を明確にし、作業を滞らせないようにするため、係決めと作業分担の確認をしました。また、着信から30分以内で原文を「やさしい日本語」に翻訳し、国際交流協会へ返信するという目標を立てました。それを達成するためにかかった時間を測定し、短縮できる箇所について話し合いました。




(2)訓練中
◇メール受信まで
 ゼミ生は普段活動を行っている部屋に集まり、過去に研究室で作成した「やさしい日本語」表現を確認していました。また担当の係やその仕事内容、当日の流れも確認しました。


◇メール受信から作業開始まで
 まずメールを受信したら、メール係が参加していたゼミ生全員へ翻訳する原文を転送します。これは、どのような文章を翻訳するのかを全員で共有するためです。次に紙に印刷し、「やさしい日本語」へ翻訳するために重要となる箇所に線を引くなどの書き込みをしました。
 各係の動きは表2のようになります。

表2 各係の作業内容(メール受信から作業開始まで)
係の名前  作業の内容 
メール係 メールの受信と転送
「やさしい日本語」の文が完成し次第すぐに返信できるよう返信用メール文作成を開始
タイムキーパー係 翻訳する原文の難易度確認
返信までにかける時間を決め、ゼミ生への伝達
記録係 メール受信から作業開始までにかかった時間の記録

 メールを受信するまでは案文検索・確認係、「やさしい日本語」文作成係、やんしす・チュウ太操作係は活動を開始していないため、表には載せていません。
 また、タイムキーパー係はメール受信以降、5分刻みに経過時間を知らせていました。目標返信時間の30分が近づくにつれ、15分経過以降は3分ごと、25分経過以降は1分ごとというように間隔を短くして、知らせるようにしました。

原文から翻訳するときに重要になる箇所を抜き出しているところ


◇作業開始からゼミ生チェックまで
 リハーサルの時と同じように、ゼミ生全員で共有した情報を基に「やさしい日本語」に翻訳する情報を抜き出しました。その後、各係に分かれ、それぞれの作業に移りました。

研究室のホームページから参考になりそうな
 「やさしい日本語」の文章を探しているところ

 各係の作業内容は表3のようになります。

表3 各係の作業内容(作業開始からゼミ生チェックまで)
係の名前  作業の内容  人数 
メール係 「やさしい日本語」の文が完成し次第すぐに返信できるよう返信用メール文を作成  1名
タイムキーパー係 翻訳作業開始から経過した時間の通知  1名
記録係 翻訳作業開始からゼミ生チェックまでにかかった時間の記録
案文検索・確認係 研究室のホームページから参考になりそうな「やさしい日本語」の文章や案文を検索  2名
「やさしい日本語」文作成係 「やさしい日本語」への翻訳作業  4名
やんしす・チュウ太操作係 翻訳した文が「やさしい日本語」のルールに沿っているかをやんしす・リーディングチュウ太で確認  2名

 翻訳作業は、パソコン上で直接文章を作りました。それをテレビ画面に映して全員で作成中の文章を共有し、意見を交換しました。
 また案文検索・確認係は担当の作業が終わり次第、「やさしい日本語」文の作成に加わりました。
 そして翻訳文が完成したら、文の長さや使用したことばが「やさしい日本語」のルールに沿っているかをチェックしました。この時、紙に印刷したり、個人のパソコンの画面を確認したりしていては時間がかかってしまいます。そこで、ここでもパソコン上の文章を映したテレビ画面を見ながら確認しました。


      
「やさしい日本語」への翻訳文を考えているところ


◇ゼミ生チェックから先生チェックまで
 ゼミ生内でのチェックが終わったら修正作業を行い、もう一度確認作業を行いました。確認作業では指摘された箇所が修正されているか、「やさしい日本語」に用いることのできない表現が含まれていないかを確かめました。そして、修正作業が終わったら、今度は先生にチェックをお願いしました。この時もテレビ画面に映ったものを確認するだけでしたので、紙に印刷する等の時間も省くことができ、なおかつ情報の共有がリアルタイムでできました。

「やさしい日本語」の文章を画面に映して共有しているところ
(写っている画面は文章作成中のもの)


◇先生チェックから放送用案文完成まで
 先生チェックで出た指摘を基に、文章を修正し、もう一度先生に確認をお願いしました。そして2回目のチェックで指摘された箇所も修正し、放送用案文は完成しました。


「やんしす」を使っての「やさしい日本語」文確認作業


◇放送用案文完成からメール送信まで
 放送用案文が完成したら、メールに添付し、国際交流協会へメールを返信しました。国際交流協会へは目標より早い29分で返信することができました。

完成した「やさしい日本語」文を送信するところ


(3)訓練後
 訓練終了後、反省会を行いました。今回は目標としていた30分以内にメールを送信することができましたが、改善点も見つかりました。たとえば「やさしい日本語」で文章を作成する際、全部の文章が完成してから入力する係の人へ伝えていましたが、1文ができるごとに伝えられたら打ち込む時間の短縮に繋がるといった意見や、その場にいる全員が情報を共有できるよう、文章を映している画面を見やすい位置に座るようにレイアウトするといったことが挙げられました。




④訓練で作成した「やさしい日本語」の文章
 原文を放送用の「やさしい日本語」に翻訳したものが、次の文章です。

地震が 起きました
東北新幹線と 宮城県の 電車は 止まっています
仙台空港の 飛行機は 飛びません
家に 帰ることが できない人は 避難場所へ 行って ください
避難場所は みんなが 逃げる ところです
外国人も 行くことが できます

避難場所へ 行く 道を 案内する人が います
案内する人の 言うことを 聞いて ください

9月28日 午前11時40分に ○○が 言いました


 上の文章を送る際には、3つのことをメール本文に書き添えました。
  放送文として読む場合には1分間に360拍のスピードで読むと効果的であること
  ポスターとして掲示する場合は全ての漢字にルビを振ること
  ○○の部分に情報の発信元を入れること





⑤訓練で参考にしたもの

 私たちが訓練で放送用案文を作成するときに参考にしたツールやホームページ及び「やさしい日本語」資源は以下の通りです。名前をクリックするとそのページに飛びます。


◇ツール、ホームページ
 やんしす:やさしい日本語支援システム
 リーディング チュウ太

◇研究室ホームページ
 増補版「やさしい日本語」作成のためのガイドライン
 ・東日本大震災で伝えた「やさしい日本語」~知りたい情報と表現方法を抜き出すための検索機能~
 ・放送用 情報内容別案文
 ・「やさしい日本語」による掲示物の目次~番号順~

 なお、「やんしす」については、2017年3月にやんしす - やさしい日本語作成支援ツール - Android Apps on Google Playも公開されました。皆さんが短時間で情報を「やさしい日本語」に翻訳する際、参考にしていただけたら幸いです。




⑥おわりに
 「やさしい日本語」は、災害時に外国人へ情報を伝えるために考え出されたことばです。しかし災害時だけでなく、普段から「やさしい日本語」表現に触れ、慣れていなければ短時間で文章を組み立てることはできません。また今回は、すでに研究室で作成していた文章を組み合わせて作る「やさしい日本語」文だったからこそ、短時間でできましたが、実際に「やさしい日本語」の文章を一から作成するにはより多くの時間がかかります。
 これからも私たちは災害時に多くの方が、早く簡単に「やさしい日本語」の文章作成ができるよう、「やさしい日本語」の文例を提案していきたいと考えています。
 もし何か分からないこと等ありましたら、お気軽に研究室にご連絡ください。メールでの依頼にも対応しております。
 研究室メールアドレス:kokugo@hirosaki-u.ac.jp






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