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外国人を対象とした 単文での調査結果へ               日本人を対象とした 連文での調査結果へ






災害時の放送において
外国人に情報が的確に伝わる
「やさしい日本語」での読み方スピード


〜外国人を対象とした連文での調査結果〜




 研究室では、「やさしい日本語」で災害情報を伝えるときの
読み方スピードについて調査しています。
この読み方スピードは、コミュニティーFMや防災無線、広報車等で
使用されることを想定しています。
災害発生時は、外国人も一人ひとりが自ら正しい情報を得て、
的確な行動をとることが重要です。
そのため、的確な行動をとれるような情報を伝えるアナウンスは、
災害発生時にとても大切な役割を担います。

 5、6文からなる連文を用いて、
日本語に不慣れな外国人に最も理解されやすく、そして聞きやすい
読み方のスピードを明らかにする
調査を行いました。
実際に広報車など、災害時に使用される放送文は、
単文ではなく5、6文からなる連文のため、
より実用性の高い結果を得ることができると考えました。

調査に協力くださった青森中央学院大学、仙台国際日本語学校、
仙台ランゲージスクール、東北外語観光専門学校に在籍する
外国人の皆さんに御礼申し上げます。
また、ここではご協力くださった学生の皆さんお一人お一人のお名前を
公表することはできませんので、
お力添えいただきました先生方のお名前をご紹介し、
謝辞に替えたく存じます。

青森中央学院大学の田中真寿美先生、佐藤香織先生、
仙台国際日本語学校の瀬戸稔彦先生、
仙台ランゲージスクールの伊藤倫子先生、
東北外語観光専門学校の荒井めぐみ先生、赤間吉雄先生には
大変お世話になりました。
この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。





調査の概要>


<調査の詳細>

(1)調査の目的

(2)被調査者と調査時期

(3)調査の方法

(4)分析の方法


(5)調査の結果





<調査の概要>

 
調査では、どのくらいの読み方スピードであれば、旧日本語能力試験3、4級程度の外国人が最も理解しやすく、聞きやすいのかを知るために、320拍/分、360拍/分、400拍/分、440拍/分の4種の読み方スピードを用いて、「聞きやすさを測るテスト」と「理解率を測るテスト」の2つを実施した。

聞きやすさを測るテストでは、400拍/分と440拍/分の支持率が高かったことから、外国人にとって聞きやすい読み方スピードであることが分かった。

一方、理解率を測るテストでは、320拍/分と360拍/分が「やさしい日本語」で伝える内容をよく理解することが分かった。

      

        図1 聞きやすさを測るテストと理解率を測るテストの結果の関係(属性の違いによるもの)


           表1 聞きやすさを測るテストと理解率を測るテストの有効回答数の内訳

  聞きやすさを測るテスト    理解率を測るテスト   
 スピード 320拍/分  360拍/分 400拍/分   440拍/分  320拍/分  360拍/分   400拍/分   440拍/分
全 体  40名の意見240回答による 38名の意見114回答による
 漢字圏  17名の意見102回答による 17名の意見51回答による 
 非漢字圏 23名の意見138回答による 21名の意見63回答による  


 図1は、聞きやすさを測るテストと理解率を測るテストの結果を、読み方スピードと被調査者の属性別に示した散布図である。聞きやすさを測るテストの被調査者は40名、理解率を測るテストの被調査者は38名である。散布図を作るにあたり使用した有効回答数の内訳は表1の通り。「〇」は外国人全体、「△」は漢字圏出身者、「☆」は非漢字圏出身者の結果を表している。この散布図では、右に記号があるほど理解率が高く、上に記号があるほど聞きやすいスピードであることを意味する。
 
このグラフから、支持される読み方スピードは漢字圏、非漢字圏出身者であるかを問わず、聞きやすさは400拍/分と440拍/分、理解率は320拍/分と360拍/分であることがわかった。


<調査の詳細>

(1)調査の目的


 320拍/分、360拍/分、400拍/分、440拍/分の、4種のスピードから、旧日本語能力試験34級程度の外国人が、「やさしい日本語」で伝えられる災害情報を最も理解できる読み方スピードを明らかにする。

外国人を対象にした単文での調査では、「旧日本語能力試験3、4級程度の外国人にとって400拍/分が最も理想的な読み方スピード(理解しやすくかつ聞きやすい)である」という結果であった。先行調査で得られた単文の結果を踏まえ、外国人にとって最も理想的な連文の読み方スピードを確定した。実際に広報車で使用される放送文は5、6文からなる連文であり、より実用性の高い結果を得ることができると考え調査したものである。



(2)被調査者と調査時期


<被調査者>


 ・日本語能力  旧日本語能力試験3、4級程度

 ・所     属  
青森中央学院大学、仙台国際日本語学校、仙台ランゲージスクール、
              東北外語観光専門学校に在籍する外国人

 ・人     数  聞きやすさを測るテスト 40名、理解率を測るテスト 38名

 ・出  身  地  
中国(14名)、ネパール(12名)、ベトナム(7名)、韓国(2名)、マレーシア(2名)、
           フィリピン(1名)
ベネズエラ(1名)、スウェーデン(1名)
           

           ※漢字圏出身者 …中国(14名)、ネパール(1名)、マレーシア(2名)        計17名
             非漢字圏出身者…ネパール(11名)、ベトナム(7名)、韓国(2名)、
                         フィリピン(1名)、ベネズエラ(1名)、スウェーデン(1名)   計23名

<調査時期>


 2014年12月1日、8日



(3)調査の方法


 
<テストについて>
 どのくらいの読み方スピードが、旧日本語能力試験3、4級程度の外国人に最適なのかを知るために、「聞きやすさを測るテスト」と「理解率を測るテスト」を実施した。以下にそれぞれのテストの概要を示す。

  (1)「聞きやすさを測るテスト」
   4種のスピードにそれぞれ3文ずつ、計12の刺激用の放送案文(以下、案文)を用意した。テスト方法は、案    文を聞いてもらうごとに、その文が聴覚的に聞きやすかったかどうかを選択肢で回答してもらった。
   回答の選択肢は、「とても遅い」、「少し遅い」、「ちょうどいい」、「少し速い」、「とても速い」の5肢である。

  (2)「理解率を測るテスト」
   「聞きやすさを測るテスト」で使用したものと同じ12の案文を使用した。
   テスト方法は、1つの案文を聞いてもらうごとに、その文の内容に関する質問を得意な言語
   (英語、中国語、韓国語、「やさしい日本語」)で読んでもらい、解答もそれぞれが得意とする4言語の
   1つで記述解答してもらった。




<使用した案文について>
 案文は日常的な場面を想定した内容となっていて、使った語彙は旧日本語能力試験3、4級程度とした。テストに使用した12の案文の詳細については、以下のリンクにまとめている。

                      調査に使用した案文の内容について(PDF)


           調査で使用した案文の条件とスピードについては、以下のリンクにまとめている。

                   調査に使用した案文の条件とスピードについて(PDF)



(4)分析の方法


               調査結果の分析方法については、以下のリンクにまとめている。

                       調査結果の分析方法について(PDF)



(5)調査の結果


<聞きやすさを測るテスト>


             表2 「聞きやすさを測るテスト」の結果(全体/漢字圏/非漢字圏)
 スピード  320拍/分  360拍/分 400拍/分   440拍/分
全 体
x=240
 40%
 58%
76%
74%
 漢字圏
x=102)
 40%
 58%  78%  76%
 非漢字圏
x=138
 40%  59%
75% 72%

 ここでは「聞きやすさを測るテスト」の結果を述べる。表2は、外国人全体と漢字圏、非漢字圏出身者それぞれの聞き取り結果を示したものである。表中のxは被調査者の回答合計点数 (x=被調査者の人数×2点×3案文)である。これは分析方法(@)の計算に基づいている。


○全体で見たとき
 400拍/分と440拍/分がいずれも70%以上と高い支持率である。これら以外の2種の読み方スピードとの間に有意水準1%で
有意差(※)が認められた。
 外国人全体では、400拍/分と440拍/分が聞きやすい読み方スピードとなっていた。



○漢字圏出身者と非漢字圏出身者を比較したとき
 漢字圏、非漢字圏出身者ともに支持率が高かったのは400拍/分と440拍/分で、320拍/分が最も低かった。また、それぞれの読み方スピードにおける漢字圏と非漢字圏出身者の支持率の間を有意差検定したところ、いずれの読み方スピード間にも有意差は認められなかった。
 このことから、漢字圏か非漢字圏出身者かを問わず400拍/分と440拍/分が聞きやすい読み方スピードであることが明らかになった。




    (※)有意差・・・統計上からは偶然に起こったとは判定できない差のこと。有意差検定を行う
             ことで、数値間の差は意味がある差なのか、意味のない単なる見かけ上の
             差なのかを確かめることができる



<理解率を測るテスト>

             表3 「理解率を測るテスト」の結果(全体/漢字圏/非漢字圏)
 スピード  320拍/分  360拍/分 400拍/分   440拍/分
全 体
x=114
 91% 89% 77% 78%
 漢字圏
x=51
 92%  96%    80%    76% 
 非漢字圏
x=63
  90%   83% 75%   79%  

 ここでは「理解率を測るテスト」の結果を述べる。表3は、外国人全体と漢字圏、非漢字圏出身者それぞれの結果を示したものである。表中のxは被調査者の回答合計点数 (x=被調査者の人数×2点×3案文)である。これは分析方法(@)の計算に基づいている。


○全体で見たとき
 
320拍/分と360拍/分の正答率が高く、それ以外の2種の読み方スピードとの間に有意水準15%で有意差が認められた。
 このことから、外国人全体では、400拍/分と440拍/分よりも、320拍/分と360拍/分の方が「やさしい日本語」文を理解することが明らかになった。


○漢字圏出身者と非漢字圏出身者を比較したとき
 漢字圏、非漢字圏出身者ともに理解率が低かったのは400拍/分と440拍/分で、他の2種のスピードとの間に有意水準1%〜10%で有意差が認められた。また、漢字圏出身者では360拍/分が、非漢字圏出身者では320拍/分が最も理解しやすい読み方スピードとなっていた。
 漢字圏と非漢字圏出身者との間に理解率の差があるように見えるが、実際は両者間に有意差は認められなかった。このことから判断して、漢字圏出身者か、非漢字圏出身者かを問わず、320拍/分と360拍/分は、よく理解できる読み方スピードといえる。
 このことから、320拍/分と360拍/分は「やさしい日本語」文の内容を理解できる読み方スピードと言える。




 ⇒調査の結果についての詳細は以下のリンクにまとめている


                   「聞きやすさを測るテスト」の結果の詳細(PDF)


                    「理解率を測るテスト」の結果の詳細(PDF)



<聞きやすく、理解しやすい読み方スピード>
 「聞きやすさを測るテスト」と「理解率を測るテスト」の結果から、外国人にとって、400拍/分と440拍/分が聞きやすく、320拍/分と360拍/分が理解しやすいことが明らかとなった。異なる読み方スピードが支持される結果となったが、重要なことは、災害時により多くの外国人が理解できることであるため、「理解率を測るテスト」の結果を優先した。
 これらのことから、漢字圏出身者にとっても、また非漢字圏出身者にとっても理想的な読み方スピード(聞きやすくかつ理解できる)は360拍/分という結果になった。





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