弘前大学人文社会科学部
文化創生課程 多文化共生コース


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ゼミ・研究室紹介

西洋史研究室/中村 武司(准教授)

西洋史ゼミナールの紹介

「西洋史」とは何か。「西洋史」の「西洋」とはどこのことなのか。ヨーロッパとアメリカの歴史のことであるのなら、なぜそう呼ばないのか。こうした問いに答えるのは、じつはたやすいことではありません。なるほど、ユーラシア大陸西方を大きな半島のことを、われわれは「ヨーロッパ」とふつう呼んでいます。しかし、われわれが知る地理的な意味での「ヨーロッパ」の定義とは、18世紀に成立したもので、古代や中世においては、範囲や定義は異なっていました。いわゆる「大航海時代」以降のヨーロッパ出身者の進出により、環境や生態系が激変してしまったアメリカやオセアニアなどのことを、「ネオ・ヨーロッパ」と呼ぶこともあります。あるいは、アジアの諸地域において、最初に「近代化」という「ヨーロッパ化」もしくは「西洋化」をめざしたのが、日本でした。「西洋」とは、日本語のコンテクストにおいては、ほんらい日本がめざすべき文明の代名詞であり、同時に(好ましい)「他者」を意味したと考えることもできるでしょう。

英国図書館(the British Library)内にあるイギリス王ジョージ3 世の胸像

西洋史のゼミナールは、このような「西洋」の歴史について、学生各自の問題関心にもとづき卒業研究の執筆を準備すべく運営されています。テーマ設定にあたり、担当教員の研究上の関心や専門分野を考慮する必要はまったくなく、自由に選んでもらってかまいません。以下にあげた過去の卒業研究のテーマの例をみてもわかるでしょうが、あつかうことのできる時空間とアプローチはじつに多様なのです。

● 古代ギリシア人のアイデンティティとオリエント
● 西欧中世における「神の平和」運動
● 17世紀ヨーロッパの科学とイギリス王立協会
● 18世紀におけるロシアの探検旅行と空間認識
● ドイツにおける第一次世界大戦の記憶

西洋史をはじめ、歴史学を大学で学ぶうえで、決して軽視してはならないことがあります。まずは日本語の読解力です。それこそが、ありとあらゆる学力の基礎であるからです。西洋史の場合、英語をはじめとする外国語の文献を読む必要も出てきますが、文法や語彙にかかわる知識以上に重要なのは、母語たる日本語の読解力なのです。もうひとつは、現在の社会や世界にたいする高い関心や鋭い問題意識です。E. H. カーというイギリス出身の歴史家がいます。彼は、古典的名著『歴史とは何か』(岩波新書)のなかで、「歴史とは、……現在と過去との間の尽きぬことを知らぬ対話」なのだと述べています。歴史学とは、過去について趣味的に探る学問などではなく、われわれが生きる現在にとって、すぐれてアクチュアルな意味をもつ知的営みであることを意識してほしいと思います。

なお、担当教員の専門分野や業績については、こちらをご覧下さい。

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