スペイン飛び地メリリャと移民

モロッコ北部の地中海沿岸には、セウタとメリリャというスペインの飛び地が二つあります。
アフリカと陸続きのスペイン領。その地理的要因から、この二つの飛び地は「移民・難民の通り道」として世間をにぎわせています。

サブサハラアフリカなどからの移民・難民の多くは、迫害から逃れたり、よりよい生活を求めたりして、故郷を離れてヨーロッパを目指します。
いったんヨーロッパに入ってしまうと、EU内での移動が比較的容易なため、近年はサブサハラアフリカだけでなくシリアなどからの難民も、アフリカを経てこのスペインの飛び地にたどり着いています。

9月下旬、この2か所の飛び地のうちのひとつ、メリリャを訪れました。


モロッコ側から見たメリリャの出入国管理所。車もしくは徒歩で出入国できる。


乗合タクシーで国境近くまで行き、徒歩で写真のような青い柵の間を数十メートル歩いて国境を越えます。
もちろん両国の出入国審査が行われ、モロッコ側の出国スタンプ、スペイン側の入国スタンプも押されます。

そんなメリリャは地中海に面していますが、移民・難民の不法入国を防ぐため、モロッコと陸続きの部分はすべて高さ6メートルの三重のフェンスで覆われています。




この2枚の写真の中央を走るのが、両国を分かつフェンス(2枚目は車内から撮影)。 手前がメリリャ(スペイン)、向こう側がモロッコです。
メリリャ側からは高いフェンスという印象ですが、モロッコ側には、フェンスだけでなくぐるぐる巻きの有刺鉄線があります。
特にメリリャでは、数百人単位の移民・難民がモロッコ側からこのフェンスをよじ登って越えようとして、地元警察と衝突するケースが多発しています。
何とかフェンスを乗り越えたとしても、メリリャからさらにヨーロッパ本土に行くために、小さなボートに何十人何百人も乗って転覆したり、泳いでいこうとしておぼれたりすることも多くあります。

国境から車で5分ほどのところには、スペイン政府が設置した移民のための一時滞在センターもありました。




このセンターは1999年に設立。
移民や難民などを受け入れ、滞在にかかわる手続きや健康診断の実施などの基本的な社会福祉サービスのほか、スペイン語の授業なども行われています。
定員は480人ですが、それ以上の人たちがここで暮らしているそうです。
訪れた日も、センターの外までシリアやサブサハラアフリカからの移民・難民の親子が座り込んでいました。

メリリャはスペインというだけあって、中心部はヨーロッパの街並みが広がっています。
フランス語ではなくスペイン語が話され、通貨はユーロ、イスラム教では禁止されているアルコールや豚肉などを取り扱うレストランがごく普通に立ち並んでいます。




一方、少し中心部を外れると、とたんに古い家並みに変わります。
案内してくれたタクシードライバーは、そのような地域に入ったとき、「ここが移民の多く住む地区だ」と教えてくれました。

8万人ほどと言われるメリリャの人口のうち、半分以上がムスリム。
実際、モロッコの伝統的衣装に身を包むモロッコ人や、アラブ系、サブサハラ系の人も多く目にしました。
小さい町だけに、ヨーロッパとして暮らすスペイン人と、移民・難民の格差を目の当たりにした気がします。




2017年10月5日